サプライチェーンマネジメント ソフトウェアの開発
製番管理 QC活動とTQM
ジャストイン生産が成り立つ条件 7つのムダとジャストイン生産
BOM(部品表) 量産型生産の特徴と課題
受注生産の特徴と課題 製造原価と内訳
生産の形態 工場の機能
接近する見込生産と受注生産 新興国とのコスト差
すり合わせと組み合わせ 不確実性に対処するドイツ自動車業界

サプライチェーンマネジメント

1990年代中頃からだったと思いますが、もとは物流システムを自社だけでなく、下流の企業や複数企業間をスルーして効率向上を目指すものとして登場しました。その後、 この概念が拡大されて、原材料の提供者からエンドユーザにいたる一連の流れをひとつのビジネスプロセスとしてとらえこの全体最適を考えようというものに変わってきました。

今日ではこのサプライチェーン(SCM)はソフトウェア・サプライチェーンなどのようにさまざまな事業領域で拡大解釈されて使用されています。ところで一方、日本ではキーワードや概念が先行してきたように感じます。 SCMが唱えられ10年以上経過した2000年代後半になってようやくサプライチェーンシステムが各企業で導入されました、構築しましたという話題が語られるようになってきます。

日本では従来からの商習慣、物流事業体の力が強い(特に日用品、家電製品など)という背景もあって、海外のようにはなかなかゆかないという事情もありました。SCMは結局のところ、「強者の理論」のようにも見えます。 商流のおいて、どこが力を持つのかは業種・業態でも様々であり、インターネットの時代アマゾンのような新たな配送業者も出現し、時代とともに変化しつづけているところでもあります。

現在においてはグローバルサプライチェーンの構築が急がれると言われていますが、コトバの壁、商習慣の違い、グローバル管理の体制とそれを支えるITインフラの整備状況など課題は多いものと思われます。


ソフトウェアの開発

日本の製造業は長くメカや電気製品などハードウェアが中心でした。ソフトウェア産業も主として情報システム会社が大型計算機上で動くプログラム を開発してきました。マイコンを使ってその上でソフトウェアを作って動かすという歴史自体がそれほど長くありません。

1980年代頃に能力の高いCPUが登場しパソコンも発展してくる なかで、OA機器や制御装置等いわゆる組込みシステムにこうしたマイコン制御が使われるようになったのです。それから20年近くの間に、CPUの能力やメモリ集積度は飛躍的に向上し、その上で動くソフトウェア も急速に拡大してきました。

当初ソフトウェアも大した分量でもなく機能も限定されていましたが、プログラム量も今では数百万行、数千万行にもなる製品もあります。一方、こうした組込み製品は元々がハードウェア主体の歴史的経緯 があるため、開発手法もハードウェアのプロセスの中でなんとなくやってきました。しかしこれほどの規模になると、ちゃんとした体系でやらないとコントロールが難しくなってきているのも事実です。

現在多くの製造業では拡大し増え続け、その構造がどんどん複雑化してくるソフトウェアをどうしたものか悩んでいます。競争が激しいので、コストをかけず早く作れということで一から作り直ししていることも できませんし、作り直しをしてもCPUやOSが変わるとムダになるということもありずっと流用開発をしてきました。過去の資産をどうするか、今後どのように効率的にソフト開発するかは大きな課題です。


製番管理

製番管理は日本国内の受注型生産を行う製造業ではとてもポピュラーな生産管理方式です。この製番というのは、営業が受注してきた案件に 製番(オーダとも称される)を割り当て、その製番に設計から製造にいたるモノや加工、設計の費用などを全て紐付けて管理するというものです。アメリカなど海外ではどちらかというと 繰り返し生産を含む量産型の生産概念が主流なため、製番管理、製番システムと言っても理解してもらえないことが多いです。

海外ではERPパッケージソフトを使った生産管理が行われますが、日本ではこの製番管理があるため多くの企業ではERPをそのまま使うことができません。私も以前あるERPの導入プロジェクト で製造モジュールを使えないかを検討したことがありますが、上述したように繰り返し量産にしか対応しておらず結果的に断念した記憶があります。

日本の製造現場では実に多くの工夫が凝らされています。自分たちの仕事をやりやすくするためだったり、取引先やサプライヤーの都合などに細かく対応してきたため、 製番管理も会社の数だけあるといえます。いや、大きな企業では工場が各地にあり、工場ごとに異なる製番管理があるというのが実状かもしれません。

製番管理は全てのモノや情報が製番にひもづいているので、現場はわかりやすいのですが、例えば設計や製造の効率化を図るための標準化をする際にはやりにくいということもあります。 さらに製造のグローバル対応で海外含めた生産管理をやろうとすると大きな壁にぶつかります。海外ではERP機能をそのまま使っていて日本の製番とはあわないのです。とはいえ、日本ではこれ からも製番管理が使われてゆくことは間違いありません。


QC活動とTQM

ものづくり企業ではQC活動、品質管理活動が行われています。最もよく耳にするのは4Sとか5Sと言われるもので、 「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」(しつけがないものが4S)です。製造現場の改善や、日々の行動規範として日本企業では従来からこれがいわれてきました。

20年ほど前でしょうか、ISO9001の認証取得が多くの企業で行われるようになるまでは、この5Sに日々の改善活動として例えばゼロディフェクト活動、小集団活動が 行われてきました。ISO9001が導入されるようになると、QC活動は従来の改善活動に加え、ISO9001のフォロー活動が主流になってきました。

多くの会社で品質マニュアルが作られ、マニュアルや成果物の整備などが行われています。一時は、このISO9001は単に品質監査を通すためのドキュメントづくりに過ぎない とか、精神はわかるが普段の仕事との乖離が大きく認証取得の時はガンバルがその後は形骸化する と言われています。

この問題は現在でもなくなったわけではなく、形骸化を抑止する手立てを講じています。TQMはこのQC活動の適用範囲をもう少し広げて、ものづくりのマネジメント全般を きちんとやってゆこうということで、実際にどんな活動をしているのかは会社・組織によってかなり差があるようです。

以前私が勤務していた企業では、市場でのトラブル状況のモニタリングの他、品質だけでなく設計、製造の進捗や課題、品質と生産性に関わる技術的指標の監査、それに 連動する小集団活動など多くのマネジメント活動がTQMの配下で行われていました。


ジャストイン生産が成り立つ条件

海外ではリーン生産と呼ばれるジャストイン方式ですが、どのような企業でもトヨタと同じようにやれるのかというと必ずしもそうではありません。 実際、TPSのコンサルタントを雇って自社に導入したが思ったほど効果が得られない、現場が混乱し逆効果になったという声をよく聞きます。なぜでしょうか?トヨタでできているのは

  自動車は受注生産でもなく、純粋な見込み生産でもない

からです。自動車は他の電気製品例えば白物家電のような需要特性とはいえず、メーカ主導で市場供給できるという特徴があります。これによりいつ、どんな製品をどの位生産し市場に投入 するかを自分たちがある程度コントロールできるわけです。トヨタ生産方針では、平準化という言葉が出てきます。これは期間を通じて常に 仕事量を一定に維持することより、さまざまなムダを最小化しようとするのです。

もちろんこれを成立させるためには、大元の需要量を計画し維持できること、よどみなく生産し続けられるよう必要な資材や部品がタイミングよく供給されること、製造工程にムラがなく 一定速度で作業が継続すること などの条件が成り立たなくてはなりません。

もうだいたいおわかりになったことと思いますが、需要量の計画自体も容易ではなく、サプライヤーへの力関係も一般には売り手圧力は強く、故にトヨタ以外の企業ではジャストインが容易 に成立しないのです。


7つのムダとジャストイン生産

ジャストイン生産というとトヨタ自動車のTPS(トヨタ生産システム)が有名で、今日では多くの企業でジャストイン生産もしくはジャストイン的な製造 を取り入れています。トヨタ自動車のTPSの目指すところは、極限までムダを取り去ったものづくりであり、7つのムダの撲滅にあります。

つくりすぎのムダ必要のない余計なものを作ること
手待ちのムダ前工程からの部品等を待って仕事をしないムダ
運搬のムダモノの不必要な運搬、仮置きなど
加工そのもののムダ本当に必要か考えず従来の方法をそのまま継承して作業すること
在庫のムダ製品、中間品が使われず倉庫で保管されているムダ
動作のムダかがむ、探す、持ち替えるなど不必要な動作
不良を作るムダ不良品を廃棄、手直し、修理するムダ

トヨタではこれらのムダを徹底してなくすための取り組みが長年行われ、ジャストイン生産もこの思想から出てきました。 サプライヤからの部品が来ないので、作業者が到着を待って仕事ができない、到着しても集配所まで作業者が部品をとりにゆかないといけないとその時間仕事ができない、 かといって倉庫に大量に山積みしておくと倉庫代がかかる ということで必要な時に必要な量だけ持ってきて作るということになったのです。


BOM(部品表)

BOM(Bill Of Material: 部品表)は製品製造に必要な部品や材料を、その製品に紐づけて情報管理するもので、MRPの時代から 使われてきた生産の中核となるもので、今日では受注型、量産型を問わずほとんどの生産管理で使用されています。受注生産型の産業では少し前までは、BOMがないまたは BOMの概念がないという状態でものづくりをしていました。(もしかしたら、今でもそういう会社があるかもしれませんが)

BOMは資材の所要量計算や発注コントロールといったそもそもの目的の他にも部品の標準化や、原価管理、リードタイム調整などの用途にも用いられるようになってきました。 やがて設計者が製品の設計の観点から ”設計BOM(E-BOM)” を作成・管理するようになると、製造用の ”製造BOM(M-BOM)” と別実態として管理するようになってきます。

これは設計BOMには設計仕様に基づく パーツやアセンブリなどが登録されるものと、製造効率アップなどの観点で実際に調達するものが異なったり、アセンブリ構成の詳細が設計のものとは異なることを意味します。 これ自体は生産管理上のメリットをもたらしますが、同時に以下の様な問題も発生することになります。

  ・設計と実際の製品構成物に食い違いがでる
  ・設計変更が製造現場に迅速に伝わらない
  ・特に在庫品の切替えタイミングと連動しない
  ・品目コードなどが一致しなくなる

これらは、設計業務、生産業務等日々の仕事のあり方に大きく依存するところであり、ERPを導入すれば解決するというような類のことではありません。取引先や顧客含めた 過去の慣習もあり地道な取り組みを要するところでもあります。


量産型生産の特徴と課題

量産タイプの製品では、市場の需要量予測に従って生産するもので、以下の様な特徴・課題があります。

  ・需要予測の精度によっては在庫が増える
  ・一般には季節変動等を別にすると需要変動を予測しきるのは難しい
  ・みかけの製造原価を下げるため短期間に一気に大量に製造する傾向有
  ・原価計算はほとんどの場合制度会計ベース
  ・配賦の影響で製品別の利益判断が見えにくくなることが多い
  ・標準化は製品によりけり

量産タイプの製品を製造する企業の対応としては、直接原価(ダイレクトコスティング)による管理会計の考え方による経営判断を行う、在庫を減らすためジャストイン生産を 志向するなどの取り組みも行われています。

需要の予測については、なかなか予見しきることは難しいため、生産調整のサイクルを細かくする、一個流しを目指すなどの施策も考えられますが、 企業の買い手や売り手との力関係にも依存するので企業ごとの対策が求められることになります。近年の傾向としては、売れるタイミングでいかに売れる量を売るかが命題 となっており、量産といっても受注に基づく繰り返し的生産、製造の色彩が強くなっています。


受注型生産の特徴と課題

受注型の生産では設計仕様が決まり、必要な資材や外注作業を発注しものを製造してゆきます。組立て型の場合でもプロセス型のものでも 大筋は同じですがここでは組立て型の製品を想定します。受注生産は概して次のような特徴があります。

  ・BtoBのケースがほとんどで、顧客仕様も毎回異なり
  ・開発中に仕様変更が頻繁に発生する
  ・故に標準化が難しい
  ・納期が長くなり
  ・設計、製造要員の費用が期間中発生し
  ・検収完了まで入金がなく資金的には苦しい

という特徴があります。また市場への対応という面で見ますと、製品にもよりますが一定のボリュームつまり受注高、売上高を狙おうとする場合、個別受注品であるがゆえに市場拡大 が難しい、商流が固定されがちなため買い手の圧力が強ければ、価格交渉も容易でないかもしれません。

こうしたリスク要因に対応すべく個別受注生産の会社の戦略としては、毎回ゼロベースに設計するのではなく半標準、最近ではマスカスタマイズド設計、モジュラー開発等の 作り方をしようとしています。従来は過去の図面をひっぱり出してそれに変更部分を追加、削除して次の顧客の案件に対処するということをしてきましたが、もうこれではコスト的にも 納期的にも対応できないという事情があるからです。


製造原価と内訳

ものを作る際の製造原価はどんなコストから構成されているのか。詳しいことは専門書などに譲りますが簡単言うと次のような内訳になっています。

材料費 直接材料費 製品に直接使用される材料の費用
間接材料費 個々の製品に何個使用したかカウントできない材料。潤滑油や塗料など
労務費 直接労務費 製品製造作業を実施した直接作業員の費用
間接労務費 品質管理や生産管理など個々の製品製造に直接関わらない要員の費用
経費 直接経費 外注加工費など当該製品に直接かかった経費
間接経費 工場の設備費用(減価償却費)や電力等光熱費など製造の共通費用

一品づつ個別に設計・製造するものと、月産数千、数万と量産する場合ではこれらのうちのどの部分が大きくなるのかは異なりますし、また組立て産業とプロセス産業でも 内訳は大きく異なります。例えば、半導体の製造では、設備に莫大なコストがかかっており、製造作業員の労務費に比し設備の減価償却費が非常に大きくなります。

製造する製品の特性や設備規模などによって、原価計算方法も異なってきます。また、製造ではなく設計者のコストは間接労務費で計算するのが一般的ですが、間接費を どのように個々の製品にチャージしてゆくのかについては、従来からいろいろな計算方法が知られています。


生産の形態

生産形態には見込み生産、受注生産などの形態があり、細かいことを言うとさらに細分化することができます。受注生産でも 受注案件ごとにゼロから設計して作る個別受注設計の場合もあれば、設計はほぼ同じで受注ごとに繰り返し生産する場合などです。私は量産型の製品と受注生産型の両方 の経験がありますが、どちらにもそれぞれの特徴、課題があります。

生産形態 特徴と課題
見込み生産 日用品などのようにある一定量の需要が見込める場合に需要予測して原材料を仕入れて生産する。需要予測の精度がポイントになる。 毎年の生産傾向などから、変動要素をどう見込むかがキーになるが、毎月、毎週の需要見込みを生産・販売・在庫の数量を見ながら調整 している。
受注生産 受注時に顧客や企画部門からの仕様を定義し、設計・製造する。設計中に仕様変更や追加などの要求を受けるケースが多く、コスト や納期のコントロールをしながら出荷時期に所定の品質とコストをいかにキープしてゆくかがポイントになる。


工場の機能

ものづくりをしている製造業では規模の大小は別として工場があります。営業や企画、顧客からの要求 に基いて設計を行い、材料を仕入れて作りテストして出荷することを行っています。会社によっては設計は別部門が行っていたり、出荷後の運用保守も 別の組織や会社が行うこともありますが、概ね以下の様な組織が存在しています。

  ・設計
  ・生産技術・生産管理
  ・調達・購買
  ・試験・品質管理
  ・品質保証

また企業も大きくなると製造原価管理の必要上経理機能も必要ですが、全社共通部門で兼務していることも多いです。ISO9001を取得した会社であれば 各組織のミッションを明確にしていることでしょう。中小企業では、これら業務が兼務されている場合もあるかもしれませんが、ここではひとまず上記のような機能 と考えます。


接近する見込生産と受注生産

受注生産と見込み生産。自分のメーカ人生の中でこの両者の製品に関わってきましたが、面白いことに年々これらは近づきつつあるように感じます。 作れば売れた時代はやがてモノ余りのご時勢になり、当たり外れが大きくなってくるとデルのパソコンで有名になったBTO(Build To Order)のように注文確定してから作る形態になりました。 もちろんそのためには部品やモジュールはある程度在庫することになりますが、大量生産の頃よりは在庫リスクは減ります。

一方、一品受注生産も繰り返し生産的なものに変わっています。注文内容が確定してからでないと必要な用品の手配もできないので、仕様が全部決まってからの方が 安全なはずですがなぜか。 昨今はリードタイムが長くなること自体がリスクとなってきたためで、買い手が欲しいというタイミングで素早く作って出荷しないと 機会損失になり、また長くかかるとその間の人の費用がかかりコストも上がってしまうわけです。

部品やモジュールなどを共通化してあらかじめ中間材としてストックしておき、注文がきたらそれらを用いて最終製品を作るので半完成品在庫を持つこと になります。どちらも製品、業種のニーズや環境が変わりそれぞれが持つリスク要因に対処するために変化してきたのですが、在庫リスクが共通項として 残ることになるわけです。ということで究極的には見込み手配する部分はなくならない。ジャストイン生産だといってもリスクをサプライヤーに外出し するだけで、誰かが在庫リスクを引き受けることに変わりはありません。


新興国とのコスト差

今となっては昔のことですが、半導体、家電製品、携帯電話などのお家芸といわれた製品が新興勢力に駆逐されたのは価格的にとても勝てなかったからとはよく言われる ところです。たしかにその通りで、労働者賃金の差は 大きかった。一方、製品を作り市場に流通させ売るまでのサイクル全体に視野を広げてみるとさらにいろいろな要素があることもわかります。

労働者賃金の違いは工場労働者の直労費だけでなく、流通業者の労賃の違い、店舗販売員の時給単価の違いなどにも効いてきます。流通経路にかかる費用はその国や民族の習慣によっても異なってきますし、 労働慣行の違いもある。

また製造機械などに設備投資した場合の減価償却が結構大きい。日本ではものによって細かく決まっているが、アジア各国ではかなりアバウトで、減価償却の概念すらないところもります。法人税などの国の法令によるものも 効いてくる。 また知財などでも地域によって感覚が違うところもあります。

アップルなどはこの知財・技術戦略が徹底されていて、製造は徹底的に安くする代わりに技術特許でしっかり利益を確保し侵害には徹底抗戦するための要員体制も敷いています。 部品メーカの日本企業も極めて不利な契約締結を 余儀なくされていてさきごろアップルを提訴したが、設計・製造・調達・流通・知財のあらゆる面にわたるコスト戦略の重要性を噛み締めるべきでしょう。


すり合わせと組み合わせ

欧州の自動車業界に詳しい調査会社の講演を聞いた時に「日本のメーカは高品質だとは思うが、摺り合わせをやり過ぎて標準化を台無しにしている」という発言がありました。 たしかに欧米では自動車業界に限らず モジュラー設計や標準化が進んでいます。日本でも自動車業界はじめ、標準化、セミカスタマイズという取組みが行われていましたがやりやすいところだけに終始して不徹底であると言われてきました。 日本はコスト低減に最後の最後まで頑張るため、設計終了後の製造段階や出荷の直前まで摺り合わせをしてしまうので、せっかく苦労して標準化しても、現場の見えないところで亜流を作りこんでいるというのです。 たしかにこれは的を得た指摘だと思いました。日本企業もこのころから比べればだいぶ進展が出てきているようです。

一方海外はというと、現場のものづくりについて言えば違う意味で苦しんでいると思われます。例えばB787。このプロジェクトは当初予算の何倍に膨れ惨憺たる状況だったらしい。外注化比率を70%位まで引き上げ、コストも 削減するという方針もあり、サプライヤー数も格段に増え相手の顔が見えず密にコミュニケーションできなくなり、現場に持ち込んだら接続できないという状況が多発したようです。

しかしだからやっぱり摺り合わせ という単純な話ではありません。これから世界中でものづくりをしてゆく上ではいろいろな面での、”わかりやすさ”が大切になります。日本的な摺り合わせは日本人以外にはできる芸当 ではありません。モジュラー設計のようにある標準化のフレームワークとこれによる組み合わせ開発は必要で、そのフレームワークの中で効果のある場面に限定して摺り合わせるという工夫がいるように感じます。


不確実性に対処するドイツ自動車業界

1970年代にアメリカのガルブレイス教授が「不確実性の時代」という著作が出たバブル崩壊前の時点で、国内はすでにモノ余り状態で、誰ががどうみても供給過剰だったので、バブル崩壊後に製造業が大凋落したのも当然 といえば当然だったと思います。またディジタル技術は新規参入障壁を下げる効果が大きく、半導体はその最たるものです。

さて現在はというと、以前にもまして多品種少量で、若い世代はクルマは買わない、ファストファッションがはやるなど一人当たり単価はさがり、何を作ったら売れるのかはさらに見通しにくくなっています。 生き残るためには次の”何か”を見つけて作らないといけませんがメーカが持つ力だけでは難しく、自社のまだ強みが残っているうちにうまい組み手を作るなどでエコシステムを形成しようという動きがあります。

ドイツの自動車産業はこの手を使っているようです。自動車製造メーカが部品メーカなどを巻き込んで情報を共有し合いながら、将来の姿を描きそこに買い手だけでなく、サプライチェーン全体の関係者を巻き込んで自分たち のビジョンが実現するような働きかけを市場や規制当局にまで行っているのです。 日本の業界ではなかなかここまでできるところはなさそうですが、不確実な将来を生き残るためには有利な状況を作り出す知恵が必要になってきているのではないでしょうか。